私の子供時代というと今から30年ほど前になるが、その頃の我が家にはカギをかけるという慣習がなかった。我が家だけではなく、この地域一帯がそうであったように思う。 小さな家屋が乱立する住宅地で治安にしてもそれほど良いとは言えなかったが、隣近所すべて顔見知りではあった。洗濯物が干したまま外出したときに雨が降ってきたりすれば、誰かが勝手に家に入って布団を入れくれているという気安さがあった。同時に不用心でもあったわけだが。 クラスにカギっ子と呼ばれる級友がいたが、その意味が当時の私にはピンとこなかったのを覚えている。帰宅して父も母も留守なのは私も級友も変わらないのだが、私はカギなど持たず彼はカギを持っている。なんとなくそのことがうらやましく、カギっ子というものに憧れたりもした。 それが10年、20年と経ち、いつのまにか我が家でも家を留守にするときにはカギをかへるようになった。我が家だけではなく地域全体でである。 ちなみに私は家族が今住んでいる場所よりも大きな家に引っ越しをしたとき、ちょうど一人暮らしをしたいと思っていたこともありそのまま家に残った。私が我が家にカギをかけるようになったのは、一人暮らしで家を空けがちになるということからくる防犯対策もあるのだが、むしろプライベートを守るという意味あいのほうが強かった。先にも書いたように、雨の日にベランダに洗濯物があれば親切心で隣近所の人がいれてくれる。その親切心はありがたく思うのだが、なにかトラブルが起きたらと思うと気が気でない。それに一人暮らしを始めてからの、自分の部屋を見られるのが恥ずかしいという気持ちも強くなった。 そういったことからカギをするようになった。それからしばらくして、防犯のためにカギをするようにしましょうという回覧板が回ってくるようになった。これは空き巣に対してだけではなく、しつこいセールスマン等の対策としても有効であるからということだった。 その頃から在宅中でもカギをかける家が増えてきた。むしろ、カギをかけない家が多い地域イコール防犯意識の低い地域であると思われ泥棒等に狙われやすいと言うことで、カギをかけていないことのほうが迷惑であるというような風潮になっていったのである。 良いことか悪いことかについては様々な意見があると思うが、これが時代の流れなのだろう。
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